ディズニーシーの風景の美しさを絵画の構図から考える

この記事は…

実体験であることを保証します!

約 8 分で読めます。( 4100 文字)

はじめに

fukuhomu
ファンタジースプリングスが遂に開業したね
TIKIKITI AI
うん
fukuhomu
以前はディズニーパークのアレコレを調べては色々と記事にしてはいたけれど…
TIKIKITI AI
うん
fukuhomu
どうせ造り物でしょと思ってしまう自分もいて…
TIKIKITI AI
遅れて来た厨二病だね
fukuhomu
ファンタジースプリングスの開業を機にパークともう一度向き合って、「造り物である」ということをもっとポジティブに受け入れられないかと思って…
fukuhomu
絵画の構図の本を何冊か読んでディズニーシー行って来たの
TIKIKITI AI
やはり厄介だな

⚠️この記事はここから先、ファンタジースプリングスのネタバレをかなり含みます。また、内容はすべて独自研究(妄想)となるため保証しかねます。

目次

全て造り物である、とは

そこには偶然は無い

というわけで久しぶりにこのジャンルの記事を書くことにしました。「ディズニーシーの風景の美しさを絵画の構図から考える」始まりです。

記事のプロローグの通り、テーマパークというものは基本的に「造り物」です。でも今日はそのことを悪口として伝えたいわけではないのです。

「造り物」であるが故に、細部に隠された工夫を理論的に知りたいと考えたのです。

テーマパークの景色は現実の景色とは異なります。メインとなる建物に隣接する建物の色や高さ、面した道や川の幅、またそこからの距離、空間を作る森林(植栽)など現実の世界ではコントロールできない部分が全てコントロールされている、つまりは全てが偶然ではなく必然であると考えます。

そういったものを「細部に隠された工夫」として捉えて分析し、少しでもパークを創造した人の思考に近付きたいと考えました。

TIKIKITI AI
なんとなく想いは伝わったピヨ

二次元の世界から学ぶ

ではどこから手を付けるべきか。闇雲にパーク内を歩いていても効率が悪いので、まず知識の拠り所を決めたいと思います。

そこで目をつけたのが絵画の世界です。ディズニーのテーマパークもその源流を辿るとアニメーションという二次元の世界です。

三次元であるパークの風景を、源流である二次元の世界のセオリーに照らし合わせることで、何か新しい発見がないかを考えます。

「二次元の世界のセオリー」は、絵画における構図の理論をベースにすることにします。

TIKIKITI AI
テーマパーク誕生以前から存在する絵画に学ぶってことピヨね

参考にした書籍

構図の理論と言っても元々ある知識はゼロなので、書籍から学ぶこととします。今回は次の3冊を読んで参考にしました。(リンク先はAmazonです。アフィリエイトプログラムを利用しています。)

fukuhomu
「絵を見る技術」については元々購入済みで積ん読に入ってたとか言えないな…
TIKIKITI AI
お前は買っただけで満足してる本が多すぎるピヨ

風景画に学ぶ

美しさとは何か

本題に入る前に、まず美しさとは何かについての話です。何を「美しい」と思うかは人それぞれ、千差万別です。しかしそれで話を終わりにしてしまうとこの記事もここで終わりです(笑)

風景を見てそれを「美しい」と感じるとき、心の中は落ち着いて、安定した・安らいだ気分になる人が多いのではないのでしょうか。

ですので、今日はディズニーシーで見る景色がどうして心を安らげる効果を生むのか、それを「美しさ」と定義して観察していきます。

3つの「景」と水平

ここから本題のスタート。まずは風景画から考えます。

風景画とはその字が表す通り風景を表す絵です。風景と言っても山や海、街並みまで世界に存在するあらゆるものが対象となるので描かれる内容はその時によって異なります。

しかし、風景画(風景写真も同様、というより写真誕生以前より風景画はある)をよく見ていくと手前から「前景」「中景」「後景」と対象を分割していくことが可能です。これが3つの「景」です。

全ての作品に3つの景が存在するわけではないのですが、この3つの景があることで空間に奥行きを出すことができます

もう1つのキーワードは「水平」です。絵画には水平の線が明示的にあるか、またはその絵の向こうに水平を感じることで見た人に安定感を生じさせます

アクアスフィアにある安定感

それでは東京ディズニーシーへと向かいましょう。まずは東京ディズニーシーのシンボル、母なる地球をモチーフにした「ディズニーシー・アクアスフィア」です。

ディズニーリゾートラインの駅から見下ろす

私はディズニーリゾートラインの駅に設けられたバルコニーから見るこのアクアスフィアが大好きです。どうしてこの景色を好きだと思うのか、そしてこの景色からどんな効果を導くことができるでしょうか?

この景色は、先述した3つの「景」がうまく調和していて、かつ建物の向こうに安定した水平の線を感じさせることで安定感を生んでいると考えます。

そして余談として、青く塗られた地面と赤茶色の建物のコントラストが景色を明るい雰囲気に引き立てています。地面の反対の色(補色)は以下のような茶色であり建物の色に近いです。この補色同士を並べることで全体を引き立てるのも絵画の手法(補色効果)です。

TIKIKITI AI
前景・中景・後景と景色は何色かをこれから意識してみるピヨ
fukuhomu
知識無く何も考えずに写真を撮っても勝手に良い構図が完成するのはすごい

線を集める

風景に隠された線

次に注目するのは「線」です。絵画では、線を使って主題を明確にして引き立てる手法が取られます。この時、線は必ずしも線として明示的に目に見えるものではなく、周りに描かれたもの(例えばカーテンのドレープや天井の柱など)で表されている場合が多いです。

そして絵における主題・主役のことを「フォーカルポイント」と呼びます。ディズニーシーの風景においても、フォーカルポイントを意識して見てみましょう。

ラプンツェルの塔の存在感

いよいよここからファンタジースプリングスです。全く新しいエリアの新しい景色で考えてみます。お題はラプンツェルのあの「塔」です。

まずこの風景も、先ほどの前景(道と岩)、中景(塔)、後景(空と岩壁)という3つに分けることができますね。道に沿って塔に導かれていく印象があります。

この風景におけるフォーカルポイントは言わずもがな、ラプンツェルの塔ですね。その塔に対してどのように線が集まっているか見てみます。

手前にある2つの岩と奥にある岩壁がそれぞれ塔上部に向かって斜めになっていますね。このおかげで塔へ目線がゆき、かつ塔の高さが強調される効果があります。全体としても綺麗な三角形となり、塔に違和感を感じない安定した構図になっています。

塔を別の角度から見ても、岩が塔を引き立てるようになっているので狙ってやっているはずです。左側の岩なんてはラプンツェルの目線と合致する線が引けます。

映画の中では塔は塔より遥かに高い岩壁に囲われていたので、パークに合わせた改変と言えますね。

TIKIKITI AI
そういえばアクアスフィアの地面にも線があったピヨね?

はい、こちらは線を匂わせるどころか思いっきり書いてあります。全ての線がハーバー側の入り口へと向かっています。

1日の冒険の始まりとなる入り口を風景の中心とし、全体のバランスを整えるような効果を狙ったのかもしれないですね。

反復を見つける

繰り返しが生む安定感

「線」の次に注目するのは「反復」です。絵の中で同じ形が複数登場することを指します。同じ形が繰り返されることで全体が落ち着いて、安定して見えるという効果があります。

アレンデールの穏やかな景色

それではその「反復」について考えながら、フローズンキングダムの街並みを歩きましょう。このエリアには「アレンデール城」と「ノースマウンテン」という2つのシンボルが存在します。

その2つのシンボルですが、どちらか一方が目立ちすぎても雰囲気が台無しになってしまいます。ここで、三角形を反復させる効果を使ってお互いを牽制し空間を安定させているのではと考えます。(そもそも映画の中では2つの城はこの位置関係では無いわけで、ここでもパークに合わせた改変がされています。)

更に、スノーマウンテンを別の角度から見てみましょう。

ここでも「お前は目立ちすぎるな」と言われているようなレベルで反復する三角形の餌食になっています。これはもうわざとやっているとしか思えないのです。

TIKIKITI AI
少し無理無いか?
fukuhomu
ごめん! 正直ちょっと思った!

注目を作る

三角形の秘密

反復する三角形を考察してきましたが、そもそも「三角形」自体が持っている特別なパワーの話に移りましょう。三角形はバランスが良く、安定した効果を出せるため非常に多用される形です。

「アナとエルサのフローズンジャーニー」ではその三角形をエルサの背景に使って、エルサがそのシーンのフォーカルポイントだと強調する場面があります。更に周りの点線によってエルサの上半身に注目が行くようにもなっていますね。

なお、話は少し逸れますが、このシーンでは2つの部屋を同時に使うという今まであまり見られなかった手法が取られています。

このシーンの主役は紛れもなくエルサですが、奥の部屋にいるアナのポーズに注目してください。脇をぴったりと閉めたエルサに対して真逆のポーズをとっています。対峙する2人を正反対にすることで、主役を際立たせる絵画の手法が使われています。まあ、オーディオアニマトロニクス(人形)は動くので常にそうなっているわけではないですが。。。

TIKIKITI AI
ライドで見られる景色は動く絵画ピヨね

奥行きをチラ見せ

注目を作るのは景色にも使われているのではないか、ということでミラコスタのプール「テルメ・ヴェネツィア」の話もご紹介。夏にのみ解放されるこちらの屋外プールで、屋内プールの建物の線について考えます。

線を引いてみたら、この通り。線の先だけ植栽が無くて、かつ高い塔がアクセント的に建っています。

これももう、狙ってやってますね(笑) 奥行きのあるヴェネツィアの世界の中にある屋外プール、という演出に魅せられているわけです。

TIKIKITI AI
敷地以上の広さを感じられて素敵ピヨ

最後に

切り口のおさらい

ここまで絵画における構図の手法をもとにディズニーシーで見られる風景を考察してきました。取り上げた絵画の手法は次の通りです。

  • 美しさとは安定
  • 3つの景(前景・中景・後景)
  • 風景の水平
  • 反対の色(補色)
  • 反復する形
  • 三角形のパワー
  • 三角形で強調する
  • 正反対になる二人

ここには書ききれない手法や見つけられていないものが星の数ほどあります。全部は見つけられないので、これにて記事は終わりにします。

fukuhomu
絵画鑑賞があまり得意じゃなかったけど、絵も見に行ってみたくなったね!
TIKIKITI AI
美術館にも行こうピヨ

まだまだ奥が深い世界、あなたも見つけて…

この記事では実例にファンタジースプリングスを多く取り上げていますが、元々は結構前から考えていたテーマでした。きっかけはシンデレラ城です。

現代建築の鑑賞が趣味だということもあり、いろいろな建築を見に行くことが多いのですが、どうにもシンデレラ城のフレームへの収まり方は普通じゃない、と。絵画の構図を学んでいくうちに三角形が収まりのいい形であるということを知り、まさに綺麗な三角形をしたシンデレラ城がそうであることは必然だと感じたのです。

しかし楽しみ方は人それぞれです。この記事が読んでくれた皆様の新しい視点の発見につながれば幸いです。

幸いです…

幸いです……

またいつか………

会いましょう……………

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