あっという間に万博は終わる
2025年4月から通った大阪・関西万博、正式名称「2025年日本国際博覧会」がもうすぐ閉幕する。この万博は、万博の区分の中では一番大きい「一般博」であり、この規模の万博は1970年の大阪、2005年の愛知に続いて3回目だ。実に20年ぶりの開催であり、おそらく今後少子高齢化によって国力が下がる一方の日本においては、よほどのことが起きない限り二度と開催されないだろう。
万博開催を通じて感じた空気
2025年の万博が開催されるまでは、とにかくネガティブな空気が日本を覆い尽くしていた。大屋根リングは金がかかっただけのただの庇だの、このデジタルの時代にリアルな万博は不要だの、メタンガスだの、トイレの建設費が高いだの、とにかく1つ話題が出れば大騒ぎで、寄ってたかってみんなが好き勝手なことを言う。SNSによって誰もが世界に届く発信を指先から一瞬でできるようになったこの時代、何か物申せるネタを見つけては、みんなで袋叩きにするという事案が後を絶たない。2025年の万博も確実にその犠牲になっていた。
動かしながら改善する
それでも万博は開催された。シンボルマークの撤回、国立競技場の設計のやり直し、そしてついには過度のリスク回避を志向して無観客開催となった2021年の東京オリンピックのような悲惨なことにはならなかった。
問題がなかったわけではない。サーバー性能が足りない予約サイトとか、ユーザー体験としては最悪の出来だった。でも私が思うのは、多少不完全でも世に出して、動かしながら改善していくのが何より大切なのだということだ。
万博の予約サイトは役所の発注だから、おそらくそういった「動かしながら改善」といった想定はなかったのだと思う。けれど、ここでみんなが分かったはずだ。デジタルのこの時代、動かしながらフィードバックを受けて改善していかないと、ものは全然良くならないのだと。おかげで予約サイトは途中で仕様が見直されて少しは改善された。
デジタルだけでなく、万博の運営だって、4月に比べて数ヶ月後にはかなりスムーズになった。身をもってその変化(動かしながら改善していく)を実感できたことが、万博を半年追っかけた人たちにとっては、万博のレガシーの1つだったと思う。
世に出たものが完璧でなければ、みんなで叩き、批判を恐れて出す側も完璧を目指してなかなかアウトプットが出せないという空気。それこそが日本の閉塞感そのものであり、世界をリードするアメリカや中国のデジタル分野との差が広がり、日本が置いて行かれる要因となったと考える。
不完全でも動かしながら改善していく。何事もそれくらいの大らかさで行こうよと、万博を通じて私は思った。
在京メディア悪者説
Xにおいて、万博のインフルエンサーが「会期前半の入場者数が伸びなかったのは在京メディアがネガティブキャンペーンをしたせい」「東京は大阪が成功するのが許せない」などといった発言をするのをよく目にする。これには関東人の1人として、勝手ながら私の見解を述べさせてほしい。
まず、メディアがネガティブキャンペーンをするのは常であり、大阪万博に限ったことではない。東京オリンピックも、選挙のときの自民党叩きも、首相下ろしも、とにかく大衆に受けるネタを見つけたらずっとそれをやる。「裏金」「国立マンガ喫茶」「国民背番号制」など、悪意を持った分かりやすいニックネームをつけて、とにかく批判するのが仕事だと思っているのだろう。だから、大阪だから特別に批判されたということではないと思う。
横浜花博が触れられないのは、まだ知名度がほとんどなく、残念ながら開催の機運が関東でさえまったくといっていいほど醸成されていないので、批判も盛り上がらないことが一因だと思う。
だから、関東と関西の分断を煽るようなことは悲しいのでやめてほしい。少なくとも在京メディアであるJ-WAVEでは、大阪万博を好意的に扱っていた番組が多かったし、万博で大きな役割を担っていた小橋賢治や小山薫堂が番組で万博の話をしていたよ。
そして、ここまで読んでくれた物好きな人に伝えたいのは、目的もなくテレビのニュースをだらだらとつけっぱなしにするのは今日からやめてほしいということだ。
万博にどんなパビリオンがあるかも知らないのに「虫が多いんでしょ?」みたいな話をしだした友人には、正直驚いた。万博のどうでもいい虫の話なんかより、もっと知っておくべきことがあるでしょう。テレビのニュースが、本来は別に知らなくてもいいものを、テレビ制作側の色をつけて無意識に脳に流し込んでくる――そのリスクはもっと知られるべきだと思う。
SNSのバズ、人と違うことをやれ
スマートフォンの普及によりSNSが幅広い世代で一般的になってから初めて行われた大型イベントと言われている今回の万博。批判ムードを生み出す場にもなったが、万博開催以後は参加者同士がつながり、体験を共有する場として万博の盛り上がりに大いに貢献した。
そのムーブメントの中で、万博に関する有益な情報は大きくバズった。バズった情報には人が殺到し、あっという間に共通の知識になっていく様子は見事だった。そして、それが共通の知識になることで、もはや「お得情報」ではなくなる。
ここからの学びは、人を出し抜こうとする情報はSNSでは得られないということ。SNSに頼らず、自ら考え自らの足で情報を稼ぎ、他の人と違う行動ができる人だけが美味しい思いができるということ(笑) だから、人と違うことを恐れずにやり抜いていこう!
人と違うことを恐れずに挑戦する一環として、これからもできる限り旅行記ブログを書いていこうと思う。そうして、大阪・関西万博からはここでひとまず卒業したい。